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【まずは知る②】「お迎え現象」終末期ケアと東日本大震災

  • 和田仁
  • 2025年12月19日
  • 読了時間: 4分

更新日:2025年12月23日

前回は、世界的な精神科医エリザベス・キュブラー・ロス医師が、有名な著書『死ぬ瞬間』の後の35年間、臨死体験や死後の世界に真摯に向き合ったお話をしました。彼女の関心は、悲嘆の心理プロセスを超えた「死の向こう側で何が起きているか」という事実の観察へと移っていったのでした。

今回は、キャンサーコンパスクリニックがある宮城県へ舞台を移します。 ロス先生が注目された不思議な現象、実は日本の終末期医療の現場でも、ある医師らによって体系的に調査され、重要なケアの指針として遺されていたのです。

宮城が生んだ在宅緩和ケアの先駆者・岡部健医師

今回のブログでご紹介するのは、故・岡部健(おかべ たけし)医師です。

岡部先生は、キャンサーコンパスクリニックがある宮城県で「岡部医院」を開設し、在宅緩和ケアの先駆者として地域医療に情熱を注がれた方です。実は、私の母校の先輩にもあたり、私も生前直接お話しさせていただく機会に恵まれました。

岡部先生は、外科医として病院で多くの患者さんの死を看取られた後、在宅ホスピスケアの道に進まれました。そこで先生は、病院では見えにくかった、ある現象に気づき、深く研究されることになります。

それが「お迎え現象」でした。

「お迎え現象」とは?(幻覚との違い)

「お迎え現象」とは、死を目前にした患者さんが、すでに亡くなった家族(両親、配偶者)や友人、あるいは美しい自然の風景を見たり、その存在を身近に感じたりする現象です。

岡部先生らが行った、がん終末期患者のご遺族への大規模なアンケート調査で明らかになった以下の事実は、非常に重要です。

  • 驚くべき高い発生率: がん終末期の患者さんの遺族への聞き取り調査の結果、約4割、場合によっては7割近い患者さんが、こうした「お迎え現象」を体験していたことが分かっています。

  • 幻覚ではない側面: 体調が悪化し、意識が混乱している状態で起こる「幻覚」や「せん妄」として片付けられがちですが、岡部先生の調査では、意識が明瞭な状態で、「お迎え」を体験しているケースも少なくありませんでした。家族と普通に会話ができる状態で、「あそこに母さんが来ているよ」と穏やかに語られたそうなのです。

  • お看取りの質の向上: そして最も重要なのは、「お迎え」を体験した患者さんは、そうでない方に比べて死への恐怖が和らぎ、穏やかに最期を迎える傾向があるという事実です。

つまり、「お迎え現象」は、単なる病的な現象ではなく、死への受容のプロセスとして、患者さんの助けになっているのではないか、と岡部先生は指摘されたのです。

東日本大震災での証言

さらに、この「死後の世界とのつながり」を示唆する事実は、特定の病床だけで起きているわけではありません。私たちにとって忘れることができない東日本大震災の後にも、遺族や被災地の方々から数多くの以下の「不思議な体験」が、岡部先生の遺志を継がれた河原正典医師(現岡部医院仙台院長)らによって報告されました。

  • 亡くなった家族の気配を強く感じた。

  • 夢に亡き人が現れて、何か大切なことを伝えてくれた

  • 生死をさまよう状況で亡き人に「助けられた」ような感覚があった。

医療現場での「お迎え」は逝く人が見るものであり、震災後の体験は遺された人が感じるものです。

しかし、この二つを並べると、一つの事実が見えてきます。医療者の観察としても、遺族の体験としても、「死」は単なる断絶ではなく、意識や感情の「何か」が継続し、生者に働きかけているという報告が、場所や状況、そして体験者を変えて、繰り返し記録されているということです。

まとめ:「まずは知る」ということ

私たちは、こうした話を「科学的でない」と遠ざけがちです。 しかし、岡部先生が遺したデータと、被災地の方々の証言は、「目に見えない現象が、確実に人の心を救っている」という厳然たる事実を伝えています。

「信じるか、信じないか」の前に、まず「現場ではこういうことが起きている」という事実を、まずは知ること。それが、もしもの時に、ご自身や大切な方が「お迎え」を口にされた際、「おかしくなってしまった」と否定せず、「会いに来てくれたんだね」と共感する優しさにつながるはずです。

死への向き合い方、そして「生」をどう生きるかという問いに、新たな視点をもたらしてくれるはずです。

次回はシリーズ最終回。

この「臨死体験」を世界で初めて体系的に調査した医師と、日本のホスピスケアの第一人者のお話を通して、このテーマをさらに深めていきます。

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