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「治った人 ガンと共に生きた人 それぞれから学んだ ガンが治る人への変わり方」(3) 小澤康敏 著


 その3は下巻中心の読書感想文です。


 下巻にも裏表紙があり、『あなたのからだは、病が有るか、無いかより、あなたがどんな人で生きるかに最大の関心を持っている』(引用)と書かれていました。またまた攻めましたね、小澤さん!と微笑んでしまいました。


 『実は、前向きやポジティブよりもっと根本的な「治る人への変わり方」があります。それは、プログラムの不具合を修正して、生きる力を妨げるブレーキを外すことです。いったんプログラムを初期化(本来の自分)すると、天命のプログラムが晴れ晴れと再起動します。』と、下巻まえがきのまとめ。

 どのように初期化するかは、人それぞれだろうと思います。本来の自分っていったい何?そんなことがわかったら苦労しないよ、という指摘も受けそうです。自分の中で生きることに上手に?フォーカスをあてることができる方は、もしかすると『晴れ晴れと再起動』できるのかもしれません。しかし、がんという言葉は、おそらく誰でも生きることと同様に死をいやおうなしに意識させられるでしょう。死は誰にでもいつか起きるイベントではありますが、それを真正面から意識させられる状況での『初期化』はやはり簡単ではなく、おそらく相当の時間を要するだろうと思います。


 今年5月のブログでご紹介させていただいた故シャムレッフェルレックスさんがお話されていたことなのですが、世に出ている書籍は「奇跡のがんサバイバー」の本ばかりで、「がんが治らなかったけれども生き生きと過ごされた方」の本がとても少ないとのこと。また、亡くなられた一部有名人の方々の闘病記のようなものは書籍化されていますが、亡くなられた一般の方の【生きざま】を記した書籍がとても少ないともレックスさんは話されていました(ちなみに現在、レックスさんの心の【生きざま】を記した新たな書籍化をご遺族様と相談中で、いつか世に出す予定です)。

 『多くの治らなかった人たちがいるのも事実です。その人たちが有する情報は意味がないのか?無視していいのか?読み取らなくていいのか?捨て去っていいのか?・・・いいえ、とても大切なことを示してくださいました。治った人の成功体験を求める気持ちはわかります。しかし、ガン仲間を見送った経験もされているはずです。どの仲間が伝えようとしたことに蓋をするのは弔いになりません。』という記載から始まる下巻の本文ですが、この世にいらっしゃらない方々から小澤さんが面談などを通してご提供された事項について、かなりのページを割いてまとめられています。

 エビデンスとして重視される根拠ある医学データもあくまで統計学的にまとめた全体としての結果であり、対象となった一人ひとりの想いや考え方や生き方という貴重な多数の「生データ」は、確率統計データのなかに埋もれ隠れてしまっています。しかし、そのような個々の体験談も、これからどうしたらよいだろうと悩む方々にとってはとても貴重な示唆が記されているだろうと思います。レックスさんがおっしゃっていたような、その人のいろいろな想いが込められた【生きざま】を記した書籍、もっとあって良い貴重な資料だろうと思います。書籍(のほうがお金になるかもしれませんが)だけでなくネットでもよいから「記録」として誰でも検索できるデータベースがあれば、とても役立つのではないでしょうか。


 あとがきの最後で『「人間はどんな環境でも生命力が尽きるまで生きる」私たちにできることは、大いなる愛の叡智を信じ、「私」という生き物を生きることです。この世は愛に充ちている。人生は美しい』と小澤さんは締めくくっています。

 「愛」とか「叡智」とか、いろいろな宗教でもいろいろな自己啓発系でもいろいろなスピ系でもよく出てくる言葉です。繰り返しますが、私は基本的に無宗教です。でも実は、いろいろな宗教の情報を少しだけかじり、自己啓発系の書籍やセミナーもそこそこ見聞きしてきました。それぞれの主張というか教義というか、なんでそれを信じるひとたちは救われて、信じない人たちは全て排除されるのか、ずっとなんとなくの違和感を感じていました。が、いろいろな情報を収集するにつれて、実は根本的に全てが同じことを別の表現でそれぞれが自己主張しながら伝達しているのではないか、となんとなく思えるようになりました。そして、生命力が尽きても人の魂は残るのではないか。スピ系の話題になってしまいますが、前世とか生まれ変わりとかあるのではないか、とも思うようになりました。

 確固たる根拠はもちろんないですが、いろいろな経過で自分の中でそう思えるようになってから、「死生観」が変わってきました。このあたりは、また改めてブログで記せればと思っています。はたから見たら、たぶん、やっぱり、スピ系の内容になると思いますが苦笑


 なんだかんだ偉そうに書いてしまいましたが、改めて個人的に一読をお勧めする上下巻の書籍です。「外国語版も出せば良いのではないですか?きっともっと売れると思いますよ」と、まだリアルでお会いしたこともない小澤さんへSNSで老婆心でお伝えしました。

 なお、先日のその1でも触れましたが、今回の改訂新版では実践版のA4資料集も販売されています(添付画像がその表紙)。お値段は上下巻より1桁高値となっています。きっと小澤さんが最も思い入れある冊子なのだろうとお察ししますし、具体的なアドバイスもいろいろ記載されています。が、このブログでは情報漏洩にもなりかねないので内容についてはあえて触れませんでした。



 最後になりますが、先日ある方が小澤さん書籍の書評で『渾身の一冊』みたいなコメントを残されていたのを目にしました。実は私も同じようなコメントをしようかと思っていたので、先を越されたー!という感じでした。感想文を書こうと思ってから数ヶ月も経過してしまった私が悪いのですが笑。

 もっとも、おそらく多くの医療関係者から、この書籍に関していろいろな目線からの反論や違和感を覚える方がいらっしゃるのだろうなとも相変わらず思っています。このブログの内容に関しても。十数年前に私が【ガンの辞典】サイトに出会った頃に感じていたような。

 

 そして正直に書くと、私も読後のもやもや感はありました。私自身もまだまだこれからの領域?なのですが、がん診療で重要な位置を占めるであろうスピリチュアルケア(魂とか)の部分があまり記されていませんでした。オカルトや占いといったスピ系、もしくは宗教の話だけではありません。繰り返しますが私は無宗教です。また、怪しげな心理療法を押し売りするつもりもありません(ただまあ、現段階で私自身はがん診療、特に死生観におけるヒプノセラピーに未知数の期待を感じていますし、セラピストの資格も取得していますが)。

 しかしながら、特にがん療養と向き合う上で死生観につながる広い意味でのスピリチュアルの部分は、本人が意識するしないに関わらず避けて通れない部分だと、私はだんだん思うようになりました。小澤さんが私と同じような理由であえて深入りされた記載をこの書籍でしなかったのかどうかはわかりません。でもきっと、将来の改定第3版では、スピリチュアルな部分にもっと深入りする勇気や覚悟をしていただけるだろうと、実は大いに楽しみにしています。






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