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腎臓がん多発転移から10年半(1):「医師が知らない余命を延ばすがん養生生活」 シャムレッフェル・レックス著 三交社


 久しぶりのくりにっく叢書紹介は、がん医療とはなんぞや的なことをいろいろな側面から学ばせていただいた故シャムレッフェル・レックスさんの自叙伝的な書籍です。ご紹介せねばと思いつつ、私の踏ん切りもつかず筆が進まない時間が数ヶ月続いてしまいました。


 書籍ご紹介の前に、レックスさんとの出会いや再会を少し記させてください。



 私がレックスさんに初めてお会いしたのが今から5年以上前。東京駅丸の内北口から歩いてすぐの場所にある東京クリニック粒子線治療外来(南東北がん陽子線治療センターの相談窓口)へレックスさんご夫妻がセカンドオピニオン相談にいらして、たまたま私が月1回の担当日でした。陽子線治療が可能かどうかの受診でしたが、その時すでに腎臓がん全身多発転移が判明して薬物治療を継続されていた状況でした。PETCTの検査結果などから、残念ながら根治的な陽子線治療の適応はないことをお伝えし、セカンドオピニオン相談そのものは終了しました。


 その時の問診で、レックスさんがいろいろな治療や施術をなさっておられたようだったので、そのあたりをさらに伺ってみました。すると、なんとびっくり、がん罹患してから自らの保養や施術を兼ねた温泉付き体質改善健康ホテルを静岡県伊東市に開業しちゃったとのこと(元々は英会話教室や保育園などの経営者さん)。診察の最後に、少し前に出版されたというご自身の書籍『医師が知らない余命を延ばすがん養生生活』(現在は絶版:Amazonなどで入手可能)と、温泉健康ホテルのパンフレットをプレゼントされました。


 でも実はそれ以来、レックスさんと私の交流はしばらくありませんでした。たまに静岡近郊在住の患者さんが南東北がん陽子線治療センターにいらした時に、話題提供で「ご自宅の近くにそんな興味深い施設がありますよ」という紹介はしておりましたが。


 レックスさんとの再会は約2年後。これもまた本当に偶然なのですが、神奈川県川崎市の新百合ヶ丘総合病院粒子線治療外来(南東北がん陽子線治療センターの別の相談窓口)で私の月1回の担当日でした。電子カルテを開くと、その日の放射線治療科受診患者一覧に、たまたまレックスさんの名前がリストにあったのです(粒子線外来以外の放射線治療科受診患者さんの氏名も勝手に見える)。シャムレッフェル・レックスさん、日本でさすがにこの時期に関東で放射線治療を受けていらっしゃる別人はまずないよねと思いまして、初診時に連絡先を教えてくださっていたレックスさんに後日ご挨拶の電話をしてみたら、やはりご本人とのことでした。2年前に初めてお会いした東京クリニックとは全く関係がなく、その後も千葉県の某有名病院でがん治療を継続していたレックスさんの主治医が(レックスさんのご希望もあって)新百合ヶ丘総合病院のサイバーナイフ治療に紹介。私が電子カルテを開いた日にたまたま同じ病院で別の放射線治療を受けられていたということだったのです。

 2年ぶりの電話の声がとてもお元気そうだったので、当時ですらあれだけの全身転移があったのに、と私は再び驚きました。「偶然ですね〜」とお互いに笑いながら電話での会話を続け、その後の経過を伺ったら更にパワーアップしていろいろな療養をなさっていたようでした。ご縁かもと勝手に思い、伊東の温泉保養所にも興味があったので「私の故郷が静岡なので、近くに行く機会があったらぜひ見学させていただけませんか?」とお伺いをしたところ、レックスさんご快諾くださいました。


 数週間が過ぎた静岡県浜松市の浜松PET診断センターの粒子線治療外来(南東北がん陽子線治療センターのもう一つの相談窓口)での私の月1回の担当日、診療後に浜松からの帰路で伊東に足を伸ばし施設見学をさせていただくことになりました。

 元々は某企業所有だったという3階建て保養所を買い取られ、こだわりの健康ホテル仕様に改修して数年前にオープンされたとのこと。敷地内にある源泉かけ流しサウナ付き大浴場が男女別にあり、お風呂の中にはゲルマニウム石やチタン塊やトルマリン石や、なんと「がんに効く」として多くの方が訪れる秋田の玉川温泉で有名な北投石(採取禁止された以前に世に出回っていた石とのこと)までもが入っていました。さらに温泉場によくあるマッサージ室(奥様ご自身が施術できるビワの葉温灸も対応)だけでなく、別棟に岩盤浴施設が併設されていました。さらには温熱療法装置やヘルストロン装置や簡易型高圧酸素装置といった補完代替医療系の諸設備が3階の特別室に目白押しで並んでいました。また、ご自身がいろいろな専門家や書籍から学ばれた食事療法やセルフケアの情報提供など、がん療養中の方々を中心に体質改善宿泊プランや健康セミナーも企画されていました。


 主治医の先生と相談しながらの化学療法や放射線治療など、病院での治療もいろいろ受けておられました。しかし、レックスさんからは(2)でご紹介する書籍のタイトル通り「がんの上手な手なづけ方」を実践されている方だなという印象を強く受けた私でした。なにが効いているのか私には(そしておそらくご本人にも)よくわかりませんでしたが、良くなったり悪くなったりしながらも全体的には病状の進行を抑えていました。

 とにかくいろいろなことを徹底して奥様とともに実行されているお姿に、またまたおどろきを隠せませんでした(さすがにここまでは、お金がないとできないことなのかもしれませんが笑)。


 よくある患者さんの体験談は、病院での検査結果を直接確認できていない一般の方(もしくは医療者でも、がん診療の経験が浅そうな気配を察する方)の伝聞です。なので、「良くなった」と記載されていても、そこの内容を確認すると懐疑的な私は「本当かな?」とつい思ってしまいます。しかしレックスさんに関しては、再会後にご本人からの提供でPETCTをはじめ病院での諸検査を経時的に直接拝見させていただいていたので、私的には間違いなく根拠あるがん医療情報を確認できた症例ということになります。



 レックスさんとの出会いと再会、これでも「少し」の記載なのですが。。。書籍のご紹介は、腎臓がん多発転移から10年半(2)として改めて近日ご報告いたします。


5/21追記:レックスさんからは(生前)このような形でいずれ個人情報を含めたご報告をさせていただくことを口頭でご快諾いただいておりました。もし不備や違反がございましたら、修正させていただきます。


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