がんに関連した医療系情報で代表的なものが、医学会のサイトや、国立がんセンターや大学病院など医学研究で有名な施設が作成している公式ホームページでしょうか。それ以外にも、いろいろな医療機関(がんコーディネートくりにっくも含まれます)や医療系企業・医療関係者が作成したサイト、がん患者さんや(自称専門家を標榜された)一般の方が作成したサイトなど、オンラインでも書籍でもSNSでも、世の中には大変多くの玉石混交な情報が溢れています。がん診療に30年余りかかわってきた私からみても、専門家を自称する医者が伝える情報ですら正反対の主義主張をなされていたりして、それらの情報をどのように判断したら良いか悩むことが少なくありません。
まして、ほとんど専門的な医療情報に接したことがない一般の方が突然がんと診断され治療の選択を迫られたら、あるいはベストな治療として主治医から勧められた治療を受けても期待通りの経過をたどらず新たな病状を宣告されたりしたら、あるいは自分がさほど希望していない診療や療法などを身内や知人から強く勧められたりしたら、多くの方が落ち着いた心境で判断や決心をするのはなかなか難しいと思います。
そんな中、今回のくりにっくブログでは敢えて、普通の書店では手に入れることができずネット販売のみという今年2月に改定新版が発刊された上下2巻の書籍をご紹介することにしました。そして、著書の「ガンの辞典」編集長である小澤康敏さんは実は医療者ではなく、元大手抗がん剤メーカー勤務、元漢方薬局運営で、2004年にガン專門情報サイト【ガンの辞典】を開設された経歴をもつ方です。
なぜ、そのような(著者の小澤さんご本人曰く「どこの馬の骨ともわからない」笑)方の書籍について、くりにっくブログの医療本紹介で私が書くことにしたのか、これまでの私の心境の変化などについて初めに書き記したいと思います。ちなみに私、小澤さんから謝礼などをいただいたことはいっさいなく、この書籍ももちろん定価で自腹購入しています。
私が【ガンの辞典】ホームページの存在を知ったのは、かれこれ10年以上前になるでしょうか…たぶん東日本大震災より前のことです。たしか患者さんから「ガンの辞典というサイトがあるのですが先生はどう思われますか?」と尋ねられ、その存在を知らなかった私は「ちまたには真偽が定かでない多くの医療情報サイトがありますからねー」と、その時は明確な言及を避けた記憶があります。あとで【ガンの辞典】ホームページをざっと眺めましたが、「医療者でもないのに何でこんなことが書けるの?」とか「病院の治療以外のことをたくさん紹介してるけど大丈夫?」といった第一印象でした。
ただ、その後もちょっと気になって、たまに訪問していたのですが、私の記憶では最初の頃はいわゆる普通の(が正しいわかりませんが)主に補完代替医療系の情報を紹介するサイトという認識でした。いろいろながん患者さんやサバイバーの方の話などもあったりして、ちょっと興味を引く部分もありましたけれど。
でもやっぱり、実際の現場を知らない非医療者のサイトだしという気持ちが私の奥底にあり、疑心暗鬼な自分がずっといました。まあ、医師であっても自分の信念のもとに(私から見たら)胡散臭そうなことを堂々と書籍にしたりネット配信したりしている方はいらっしゃいますけれど苦笑
しばらくして、小澤さんがこれまでの【ガンの辞典】をまとめる書籍を出されたという情報を(たぶん【ガンの辞典】ホームページから)得て、たしかそんなに高値でなかったような記憶と、なんとなく目を通してみようかなと思ったことから、意を決して初版をネット注文で購入してみました。
で、拝読させていただくと、あにはからんや、私が臨床で感じていたことと似たような内容がいろいろと記されているではありませんか。私の中で、ちょっとカルチャーショック的な感覚がありました。そして、当時在籍していた南東北がん陽子線センターで「がんと向き合う生き方」的な患者さんとのサロンを定期開催したいと考えていたところだったので、原著が2014年のニューヨークタイムズ・ベストセラーとなった知る人ぞ知る「がんが自然に治る生き方」和訳版書籍とともに、話題提供として紹介させていただくことにしました。他にもいろいろ書籍や資料があるにもかかわらず笑。ちなみに、「がんが自然に治る生き方」原著著者のケリー・ターナーさんも医療者ではありません。だから、彼女の書籍が「うさんくさい」と評される医療者は少なくないと思うのですが…
その時の心境は、昨年のくりにっくブログでも紹介させていただきました。南東北病院さんのホームページにもまだ掲載されています。
そんな小澤さんが改定新版の書籍を出されるとのことだったので、期待しながらさっそく予約注文しました。実はこの2冊だけでなく、今回は実践版のA4資料集も販売されています(それも私は手に入れました)。たぶん後者のほうが彼の想いがより詰まっているのだろうと思いますが、今回の書籍紹介は価格的に手に入れやすい改訂新版に限定しています。ご容赦ください、小澤さん。
上巻の表紙を開くと、裏表紙にいきなり『人生でできること 与えられた「課題」を変えることはできない 与えられた「課題」は答えることができる』との記載が目に入りました。いきなり哲学的な文章、けっこう攻めますね小澤さん!という第一印象。ただ、初心者的な(?)がん患者さんがみたら、この人は下手をすると怪しげな心理学ビジネス誘導か新興宗教でも紹介したいのか?と勘ぐりそうな一文ではあります(あくまで私の印象で、申し訳ございません)。
とはいえ、読み進めると初版を拝読した時よりさらに私の経験や感覚に近い記載が目白押しでした。だから世の中に数多く出ている医療系書籍の中から、あえてこの(書店非売)書籍を再びくりにっくブログでご紹介させていただくことにしたのです。
ということで、前フリがかなり長くなってしまったので、本題である書籍のご紹介は(2)に続く、とすることにいたしました。
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