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自宅に来てくれる未来の放射線治療!?

  • 和田仁
  • 3 日前
  • 読了時間: 5分

これまで2回にわたって、放射線治療の未来についてお話ししてきました。最終回の今回は、「おうちに来てくれる治療の時代」というテーマで、未来の医療の姿を、一緒に思い描いてみたいと思います。


1. 東北の課題:通院の負担をなくす


東北にお住まいの方なら、思い当たる場面があるかもしれません。

「治療のために、遠くの大きな病院まで通わなければならない。片道2時間、3時間かけて通院する。家族に車で送ってもらうか、一人で長時間の電車やバスの移動。冬の雪道は特に大変。」

高齢の方や体の弱った方にとって、この通院の負担は想像以上に大きなものです。時には、治療よりも通院の方がつらい、という声も聞きます。


しかし、もしも治療の方から患者さんのもとへやって来てくれたら、どうでしょうか?そんな話が、夢物語ではなくなりつつあるんです。


2. 移動式治療車:技術が地域を巡回する未来


まず、移動式の放射線治療装置について考えてみましょう。

健康診断の時に、地域の集会所や学校にやってくる、移動式のレントゲン車を見たことがありますか?もし、そんな「移動式の放射線治療車」が実現したら、どれほど楽になるか。


実は――技術的には、もうすぐそこまで来ているんです。装置が小型化され、必要な安全装置も整えば、トラックサイズの車両に治療装置を載せることができるでしょう。

想像してみてください。週に1回、地域の診療所や公民館に移動治療車がやってくる。患者さんは住み慣れた地域で、最新の放射線治療を受けることができる。


ここで大切なポイントがあります。それは「治療回数の短縮」です。

従来の放射線治療は、毎日平日に通院して、週5回を数週間続けるのが標準的でした。これでは、移動式治療車での対応は難しいですよね。


でも、最近の高精度放射線治療は違います。陽子線治療や、IMRT(強度変調放射線治療)、定位放射線治療といった最新技術では、数回の治療で済むことが多いんです。週に1回、あるいは月に数回の治療でも効果を上げることができるようになりました。

これなら、移動治療車が地域を巡回することが現実的になります。


3. 災害医療と在宅緩和ケアへの応用


移動式治療車は、通院負担を減らすだけでなく、災害時にも力を発揮します。

地震や台風で病院機能や道路が制限されても、移動治療車が被災地に入れば、治療の継続が可能です。東日本大震災のとき、治療中断を余儀なくされた患者さんが多くおられましたが、移動治療車があれば、そこで希望をつなげることができます。


さらに、将来的には在宅での治療も夢ではありません。

特に、痛みを和らげる緩和照射は、1回から数回の照射で痛みが軽減されることが多く、移動式治療や在宅治療には最も適しています。

装置のさらなる小型化や安全管理・ルール整備が進めば、ご自宅で家族に見守られながらがん治療を受ける。そんな未来も現実味をおびてきています。


4. オンライン診療が実現する「遠隔連携」


一方で、移動式治療には課題もあります。それは、治療計画を立てること、放射線治療の準備をすることなんです。放射線治療では、CTやMRIの画像をもとに、どの部分にどのくらいの放射線を当てるかを細かく決めます。これを治療計画といい、専門医の技術が必要です。


ここで役立つのが、オンライン診療です。

移動治療車には、小型のCT装置と高速通信設備を積んでおきます。患者さんのCT画像を撮影したら、すぐにインターネットで専門病院に送る。専門病院の専門医が、オンライン診察を行い、画像をもとに治療計画を立て、それを移動治療車に送り返します。


現場では、看護師や放射線技師が、専門医とビデオ通話で連携して、安全に治療を行います。今よりさらに高速な通信技術が普及すれば、画像の送受信も瞬時に行えるようになるでしょう。


5. 私たちが目指す「患者さんに合わせた医療」


私が描いている未来の医療は、こんな感じです。

山あいの小さな町に住むおじいちゃんが、がんの痛みで困っている。そこに、週に1回、移動式の放射線治療車がやってくる。地元の診療所の先生と、都市部の専門医がオンラインで連携し、顔なじみの看護師さんが寄り添いながら治療を受ける。痛みが和らいで、また畑仕事ができるようになります。


治すだけでなく、暮らしを取り戻すこと。それこそが、医療の本当の目的だと私は思います。これが、私たちが目指す地域医療の姿です。

技術の進歩によって、地方と都市部の医療格差がなくなる。どこに住んでいても、最高水準の治療を受けられる。そんな時代が来ることを信じています。


もちろん、課題は山積みです。移動先での安全管理、医療機器としての承認、診療報酬の設定など、法的な整備が必要です。ただ、すでに海外では試験運用や実証例も出始めていますし、日本でも一歩ずつ前に進んでいます。

大切なのは、患者さんに合わせて医療を届けるという視点。そんな未来を作っていければ良いですよね。


まとめ:技術は「人のため」にある


3回にわたって、放射線治療の未来についてお話ししました。

  • 第1回: 東北にある世界最高水準の技術

  • 第2回: 患者さんに優しい装置(FLASH、小型化)

  • 第3回(今回): 治療が患者さんのもとにやってくる時代

どれも夢のような話かもしれませんが、私たち医療従事者は、その夢を現実にするために、日々努力を続けています。


そして、まもなく公開予定の第4回(特別編)では、AI技術の進化という、医療を取り巻く最大の変化に焦点を当てます。

テーマは 「AI時代だからこそ、血の通う医療を届けたい」


技術が奪えない、人にしかできない医療の本質について、私の考えをお伝えします。


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