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新しい全身がん検診「DWIBS」とは?

  • 和田仁
  • 6月5日
  • 読了時間: 5分

 今回は、がん検診で使われ始めた新しい画像検査「DWIBS(ドゥイブス)」について、全身がん検査の代表格であるPET-CTとの違いを含めて、放射線治療専門医&がん治療認定医の視点から、できるだけやさしくご紹介いたします。


 みなさんは、「PET-CT」や「全身MRI」といった検査を耳にされたことはありますか?これらは、体の中を詳しく調べて、がんがあるかどうかを確認するための検査です。そして最近、DWIBSという新しい全身MRI検査が注目されています。



【DWIBSとは?】


 DWIBSは、「拡散強調MRI(Diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression)」の略です。MRIの技術を使って、体全体のがんなどの病変を見つけることができる画像検査です。

 水分の動きをとらえて画像化するため、がん細胞のように細胞密度が高い部分がはっきりと映し出されます。PET-CTのように放射線を使うことなく、がんの有無などを調べることができるのが大きな特徴です。



【DWIBSのメリット:PET-CTとの違い】


1. 放射線を使わない検査=「被ばくなし」


 PET-CTでは、がん細胞に集まりやすいブドウ糖のような薬を使い、体内に放射線を注入して画像を撮影します。このときに1回あたり10〜20ミリシーベルトの被ばくがあります。これは、胸のレントゲン検査の約400〜500倍に相当します。

 DWIBSはMRI技術を応用した検査で、放射線を使わないため、被ばくの心配がありません。何度検査を受けても体への影響がなく、特に検診目的の方や若い方、ご高齢の方にも安心して受けていただけます。


2. 注射・待ち時間がない


 PET-CTは、注射をしてから1時間ほど体を動かさずに安静にして過ごす必要があります。一方、DWIBSは注射もなく、待ち時間もほとんどありません。外来でスムーズに受けられるため、忙しい方にも負担が少ない検査です。


3. 幅広い方に対応できる


 PET-CTでは、糖尿病の方や腎機能が低下している方、また妊娠中や授乳中の方は注意が必要です。それに対してDWIBSは、これらの方々にも比較的安心して使える検査です。年齢や体の状態にかかわらず、多くの方に適応できるのも利点のひとつです。


4. 費用面の違い


 PET-CTは、全額自費の場合10万円前後かかることがあります。保険が適用されるのは、がんの診断時や再発・転移の疑いがある場合などに限られており、その場合でも3割負担で約3万円以上かかります。

 DWIBSは現在のところ自由診療ですが、地域によっては4万円前後で受けられる施設もあります。たとえば、東京から新幹線で仙台の施設に行っても、費用を抑えられるケースもあります。


 DWIBSは保険の対象ではないものの、自己負担額としてはPET-CTと大きな差がない場合もあります。そしてDWIBSは、PET-CTのように検査を受ける条件(「がんと診断されたとき」や「再発・転移の疑いがあるとき」など)がなく、希望すれば検査を受けることができます。

 ただし、現時点では検査にかかる手間や時間、保険制度上の制約などから、保険診療としては認められていないという背景があります。


5. がんを見つける力は、ほぼ同じくらい


 DWIBSとPET-CTでは、それぞれに得意な臓器や特徴がありますが、どちらもがんを見つける力はほぼ同じくらいとされています。検診を目的とした全身のチェックには、DWIBSでも十分に対応できます。


 実際に、乳がんの再発悪性リンパ腫小児のがん(神経芽腫)などに対して、DWIBSとPET-CTを比べた研究も少しずつ増えてきています。これらの研究では、「がんの種類や体の場所によって差が出ることもあるけれど、全体としては大きな差はない」という結果が出ています。

 ただ、これまでの研究の多くは、実際の患者さんを診ながらデータを集めたもので、どちらの検査が本当に優れているかを厳密に比べるには、もう少し規模の大きな詳しい研究(ランダム化比較試験など)が必要でしょう。今後、よりしっかりとした研究が進めば、DWIBSの信頼性がさらに高まっていくと期待されています。



【DWIBSの弱点】


 どんな検査にも「得意なところ」と「ちょっと苦手なところ」があるもの。DWIBSにも、少し氣をつけたい点があります。

 

1. 見えにくい臓器がある

 DWIBSは全身を調べることができますが、肺や肝臓、そして脳など、一部の臓器ではMRIの特性上、がんが見えにくいことがあります。これはMRIという仕組み上の特徴で、DWIBSがすべてに対応できる万能な検査というわけではない理由のひとつです。


  1. 偽陽性(がんでなくても怪しく映ること)もある

 がんだけでなく、炎症や良性のしこり(腫瘍)も、がんのように見えることがあります。つまり、実際には問題がないのに「がんかもしれない」と心配になる方が増加する可能性があります。ただし、これはDWIBSに限らず、PET-CTでも同じようなことが起こります。

 

3.「がんの勢い」はわからない

 PET-CTは「がん細胞がどれだけ活発に動いているか(糖をどれくらい取り込んでいるか)」を見る検査です。それに対してDWIBSは、がんの「活動の強さ」まではわかりません。そのため、がん治療後の経過観察などでは、PET-CTがより適している場面もあります。


 それでもDWIBSは、早期発見をめざすがん検診としての価値は大きいです。どんな検査も完ぺきではありませんが、それぞれの良さを知ったうえで、自分に合った検査を選ぶことが大切ですね。



まとめ:DWIBSは、体にやさしいがん検診の新しい選択肢


 DWIBSは、

  • 放射線を使わない

  • 検査が短時間で受けられる

  • 多くの人に適したやさしい検査

  • 自由診療でも比較的手が届きやすい費用

といった特徴があり、がん検診にとても適した新しい検査方法です。体への負担をできるだけ減らしながら、安心して受けられる検査として、今後ますます注目されていくと考えられます。


 キャンサーコンパスクリニックでは、がん検診を含めた検査の選び方や、「精密検査が必要」と言われた場合の次のステップなどについても、患者さんの状況に応じて、丁寧にご相談をお受けしています。


 検査や受診についてお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。




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