エビデンスは海老の種類?がん告知後の情報迷子にならないために
- 和田仁
- 4月17日
- 読了時間: 3分

先日、クリニックから歩いてすぐ、青葉城址のふもとにある東北大学百周年記念会館(川内萩ホール)で開催された、日本胃癌学会の市民公開講座に参加してきました。
そこで改めて痛感したのは、理想のがん医療と、患者さんが置かれている切実な現実とのギャップです。
「エビデンス」は海老の種類?
講座の中で、ある若い胃がん患者さんのご家族のエピソードが紹介されました。
がん告知のショックで頭が真っ白な時、主治医が言った「エビデンス」という言葉。それを聞いたご家族は、「エビデンスって何? 海老の種類のこと?」と思ったそうです。
笑い話ではありません。これが、がん治療のリアルです。
こころが必死に衝撃を受け止めようとしている時に、カタカナの専門用語はなかなか届きません。パニックになるのはあなたが無知だからではなく、それほどまでに大きな衝撃を必死に受け止めようとしている証拠なのです。
なぜ一緒に選ぶ(SDM)が難しいのか
最近の医療では、医師と患者さんが一緒に話し合いながら治療を選んでいく考え方、『SDM(共有意思決定):Shared Decision Making』が理想とされています。
しかし、現実はどうでしょう。
時間の壁: わずか10〜15分の診察。
権威の壁: 病院のシステムが決まっている中での、対等の難しさ。
情報の壁: 医療者から渡された説明(言葉や文字)が、医学的に難解すぎて何を聞けばいいか分からない。
診察室の中だけで解決や納得しようとするのは、今のシステムでは『絵に描いた餅』になりがちです。
あなたを惑わす3つの情報の罠
さらに、診察室の外には情報の洪水が待ち構えています。
ネット、書籍、周囲の善意のアドバイス……。
日本胃癌学会の市民公開講座で講師のお一人だった一般社団法人igannet(イガンネット)代表理事の轟浩美さんが、ご講演時に指摘されたように、そこには、氣づかないうちに私たちを惑わせる3つの罠があります。
アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み): 「抗がん剤は地獄だ」といった極端なイメージで、正しい情報が耳に入らなくなる。
エコーチェンバー(こだまの部屋): 同じ意見の人とだけ繋がり、まるで鏡張りの部屋で自分の声の響きだけを聞いているような状態になる。
フィルターバブル(情報の泡): 検索サイト(や生成AIなど)が「あなたが欲しがりそうな不安な情報」ばかりを見せ、情報の泡に閉じ込めてしまう。
これらの罠にハマると、自分にとっての最善、最適が何なのかが見えなくなってしまいます。
なぜ軍師・顧問弁護士的存在が必要か
病院の主治医や担当医は、最新の医学をもってがんと戦う『治療の司令塔』です。
しかし、その戦いを患者さんご自身の人生にどう位置づけ、どう勝ち抜くかの戦略を共に練る『軍師(メディカル・ストラテジスト)』や、患者さんの権利と利益を徹底して守り抜く『顧問弁護士』のような存在も、SDMを掲げる今の医療には必要ではないでしょうか。
あなたの情報の霧を晴らすために
私の役割は、単に医学知識を解説したり、教えたりすることに留まりません。あふれる情報の中から、何があなたにとっての真実で、何がノイズ(雑音)なのかを戦略的に仕分けし、納得感のある決断を下せるよう、こころの土壌を整えることにあります。いわば『情報のデトックス』を行い、パニックで埋まった頭のメモリを解放してあげる作業です。
一人で抱えきれなくなったら、ここで一度荷物を下ろして整理整頓すればいい。そんな『こころの安全地帯』であることを、キャンサーコンパスクリニックは目指しています。
そして、情報の格差を埋め、納得という『羅針盤』を手に主治医と対話する。それが私の考える、これからの医療の当たり前にしたい姿です。
キャンサーコンパスクリニックは、あなたの側に立つ『軍師』として、これからも歩み続けます。




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