どうして医師は、“先生”と呼ばれるの?
- 和田仁
- 5月31日
- 読了時間: 4分
今回は、誰もが一度は「そういえば、なんで?」と思ったことがあるような、身近でちょっと不思議なお話をしてみたいと思います。
【“先生”って、どんな人?】
子どもの頃、“先生”といえば、学校の先生を思い浮かべた方が多いのではないでしょうか。でも、大人になると、あるいは世間では、医師だけでなく、弁護士さんや政治家の方など、いろいろな職業の方が“先生”と呼ばれていますよね。
なんだか偉そうに聞こえるな…と感じられる方も少なくないでしょう。
もともと“先生”という言葉は、漢字の意味で「先に生まれた人」「年長者」を表していました(goo辞書より引用)。そこから、「知識や経験があり、敬意を払いたい相手」に使う言葉へと変わってきたようです。
【医師が“先生”と呼ばれる理由】
「医師」の“師”は、“師匠”の“師”と同じで、人に教えたり導いたりする立場の人を表す言葉だそうです。
江戸時代では、医学を学べる人は限られていて、とても特別な存在だったそうです。そんな背景もあって、医師は“先生”と呼ばれるようになりました。そして、明治時代に入り、西洋医学が導入されると、大学医学部の教育や国家資格の制度が整い、医師の社会的な信頼や責任も大きくなっていきました。それが今の「医師=“先生”」という呼び方につながっているんですね。
ちなみに、医療の現場でも、医師以外に「師」がつく職種として、看護師さんや薬剤師さんなどがあります。学会や講演の場では“先生”と呼ばれることもありますが、日常の医療現場ではあまりそういう呼び方はされていませんね。
この背景には、日本の医療制度の仕組みも関係しているかもしれません。保険診療では、基本的に医師の指示に基づいて診療が行われ、診療報酬が支払われます(収益が発生します)。
つまり、「責任をもって判断する立場」であることから、医師が“先生”と呼ばれるようになったとも考えられます。
【私が医師を“先生”と呼ぶ理由】
ここで、少しだけ個人的な話をさせてください。10年以上前のブログにも書いたのですが、「私がなぜ医師の仲間を“先生”と呼ぶのか」には、ちょっとした事情があります。(※過去のブログはこちら →仮面放射線腫瘍医の思いつき日記)
医学部では、年齢の違う学生がたくさんいます。高校時代の後輩が大学では先輩に、あるいは大学でも留年したりすると先輩が後輩になることもあって、医師になってから呼び方に迷う場面が多いんです。例えば…
・ 10歳上なら“先生”って呼んでも自然。でも、1歳上だったら?
・右の席の方には“先生”、左は同級生だから「さん」…でも、そのお二人が先輩後輩だったら?
…とにかく、呼び分けがとても大変。
だから私は、「みんな“先生”でいいか」と思うようになったんです。当時の本音は、「呼び分けが面倒だから」。実は今もそんなに変わっていません(笑)。
『追記』
以前、ちょっと貫禄ある雰囲気の後輩医師に対して、童顔様の先輩医師がいつもの調子で「○△!」と苗字で呼び捨てにしたら、それを近くで見ていた某入院患者さんから「あの(先輩)先生ったら、目上の先生にあんな失礼な態度をとるなんて!」という内容の苦情投書が届いたことがあったそうです。実はこれ、先輩の先生ご本人から直接うかがったお話なんです。いやはや、なかなか気を遣う場面も多いものですね。
【“先生”と呼びたくなるのはどんな人?】
こうしてこうして“先生”という言葉の背景をあらためて考えてみると、見えてくることがあります。
「この人には敬意を表したい」「信頼できる」 …そう思う気持ちが、“先生”という言葉につながっているのかもしれません。
みなさんにとって、身近な“先生”って、どんな方でしょうか?
たとえば
・小学校の担任の先生
・病気のときにお世話になった医師
・人生の節目で、親身になって支えてくれた先輩

そんな人を思い出してみると、自分がどんな人に敬意をもち、どんなことを大切にしているか、少しだけ見えてくるかもしれませんね。
今回のブログは、医師が“先生”と呼ばれる理由について、少し考えてみました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、また。キャンサーコンパスクリニック「仁先生」でした。
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