今月の東洋経済オンラインのライフ「不登校新聞」に、『精神科で10年働く看護師が使う「心をほぐす言葉」どうすれば、子どもの心をゆるくさせられるか』という記事が掲載されていました。
記事の最初に以下の記載がありました。『「お寿司最高かよ」。いやいや、食べるお寿司ではありません。このフレーズは子育てをするうえで極意となるキーワードなのです。このキーワードを提唱したのは児童精神科病棟で働く「子どもの精神科看護師@こど看」さん。こど看さんは日々の経験をもとに、ツイッターとユーチューブで子どもへの関わり方について発信しています。こど看さんが「お寿司最高かよ」に込めた思い、子どもと向き合ううえで大切にしていることを聞きました。』(引用)
「おすしさいこうかよ」、以下の9つの頭文字を取った言葉だそうです。
1.おびやかさない
2.すぐに助言しない
3.叱責しない
4.最後まで話を聞く
5.(子どもの)意向を軽視しない
6.子どもが使う言葉を使う
7.疑わずにいったん信じる
8.(子どもの)感情を否定しない
9.余計な一言を言わない
これら9つは、がん診療でも通じるキーワードかもしれません。以下、記事で「子どもの精神科看護師@こど看」さんが書いていた内容を改変し、がん患者さんと向き合う上で大切なことを、私なりに少し変換してみました。
1.おびやかさない
がん患者さんを簡単におびやかせてしまうのが医療者。立場を利用して、がん患者さんを怖がらせないよう、気をつけないと。
2.すぐに助言しない
助言のタイミングに気をつける。がん患者さんが課題に向き合っている途中で口をはさんではいけない。「もっとこうしたほうがいいよ」、「それやっちゃまずいでしょ」などの言葉は、のどまででストップ。体調次第でしょうが、自由診療でお金をかけていたとしても…?
3.叱責しない
失敗を非難しないということ。何をもって失敗とするか。失敗か成功か、その人の受け止め方で異なります。将来、その人がどのような経過をたどるか、誰にもわかりません。
4.最後まで話を聞く
医療者はがん患者さんより経験を積み重ねている分、がん患者さんの言うことをさえぎって批判してしまう。「いや、でも、だから」とつい言ってしまいますよね。ここで意識するのは、がん患者さんは治療(成長)途中であるということです。がん患者さんは今ある力で話しているだけのこと。それを理解するのが大事です。
5.意向を軽視しない
「どうせ話してもムダ」という、がん患者さんのあきらめを防ぐために意識しています。医療者はがん患者さんが自分の価値観から外れたことを言うと否定的な反応をしがちです。
6.子ども「が使う→でもわかる」言葉を使う
想像してほしいのですが、人によく知らない業界の専門用語をバリバリ使って話されてもわからないですよね。それと同じで、がん患者さんに医療者の世界の言葉で話しても通じません。
7.疑わずにいったん信じる
まずは、がん患者さんを信じて着実に信頼を重ねるほうがいいと思います。
8.感情を否定しない
感情に正解も不正解もないと思うからです。感情のコントロールが難しいのは当然なんです。
9.余計な一言を言わない
ついやってしまうので気をつけています。でも、それを言ってしまうと関係性が損なわれます。余計な一言に関しては、本当に言わないだけでプラスになると思います。
「子どもの精神科看護師@こど看」さん、次のようなことも書いてました。『全部を完璧にできる人はすくないと思います。でも、だからといって「子どもへの対応をまちがわないようにしなきゃ」といつも思っていると、親自身が硬くなり、子どもを緊張させてしまいます。子どもと距離を縮めたいのにそれでは意味がありませんよね。そこでもう1つ、私が意識していることをお話ししたいと思います。それは、ユーモアを取りいれるということです。…(中略)…要するにボケをかますんです。
人にユーモアを使うときは、自分がゆるくなるだけでなく、相手の心をどうゆるくさせられるかと、その人のことをたくさん考えると思います。だからユーモアは相手に関心を示すサインのようなもの。そう考えると爆笑を狙う必要はありません。』(引用)
ユーモア、ボケ。センスや才能もあるでしょうが、数をこなせば、ちょっとしたオヤジギャグくらいは出てくるようになります(経験談、あくまで自己判断)
厳しい現実をお伝えしたり、笑えない状況の時だって、もちろんあります。でも、がん患者さんが少しでも緩和いただけるよう、「おすしさいこうかよ」を私も意識しながら、ユーモアやボケを時には交えながらの診療ができるよう精進を重ねていこうと思います。
PS:実は私、先日の父の日、施設に短期入所している母の面会に、車で父を連れて行った帰りに、父にお寿司をごちそうになりました。
「おすしさいこうかよ」。東北地方だと、「お寿司さ(食べに)行こうか、よ!」でも通じます。父の日に父からごちそうを含め、どうかご容赦くださいませ。
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