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「がんでも長生き 心のメソッド」 保坂隆+今淵恵子著 マガジンハウス社


 約7年前(2016年1月)に初版で、東海大学医学部精神科元教授で現在は都内で保坂サイコオンコロジー・クリニックご開業されている保坂隆先生(執筆時は聖路加国際病院精神腫瘍科ご所属)と、炎症性乳がんステージ4(肝転移、多発リンパ節転移)で当時1年ほど療養されていたコピーライターの今淵恵子さんの対談形式による、がん患者さんや身内の方々の心のケアに役立つ内容がたくさん記されている書籍です。


 書籍のまえがきで今淵さんは『私が「がん」を告知される前後、そして治療を始めてから、いちばん欲しかったのは、「〇〇をすれば、がんは治る」系ではなく、心の辛さを癒してくれるノウハウだった。それも、現実逃避的なものではなく、ふつうの人間ががんを宣告された時、この病気をどう受け止め、楽しく幸せな気持ちを取り戻すことができるか、と言う方法論。そして、病気を折り合いをつけながら、いつかはやって来る「死」を平穏に受け止め、次の次元へと旅立つための「具体的な方法」だ。』(p.16より引用)と記されています。

 今淵さんはがん告知を受けて以降、関連書籍をいろいろ読まれたそうですが、内容が哲学っぽかったり現代医療の否定本だったりと、現実の自分に折り合わなかったそうです。そして、知人に紹介されて受診した保坂先生から自ら本を書くことを勧められ、『すべてのがん患者やがんを恐れる人たちにお届けすることが!』(p.16より引用)今淵さんご自身に残された時間の使い道と、この書籍を執筆する決心をされたそうです。


 

 本文は対談形式となっており、今淵さんの問いかけや疑問などに保坂先生が精神腫瘍科医師の立場からアドバイスなどをお伝えしています。前半は、がんの生活によるストレスを具体的にどう解消するかについて触れられていました。

 ”静”のストレス解消法として、リラクゼーション法を身につけることが必要とのこと。「腹式呼吸」「筋弛緩法」「自律訓練法」「イメージ療法」の4つを保坂先生はお勧めされていました。また「ベネフィット・ファインディング」という、1枚の白紙にタテ線を引いて左側に「がんになって悪かったこと・失ったことやもの」を、右側に「がんになって良かったこと・得たことやもの」をリストとして可視化する手法も紹介されています。ベネフィット・ファインディングは、以前にも紹介したサイモントン療法のプログラムにも採用されています。がんによるうつ状態に対しては、薬物に頼らない「認知療法」や「運動療法」も効果があることを紹介されています。


 書籍の後半は、がんの患者さんに限らず全ての人がいずれ迎える「死」への恐怖や悩みを主な話題にされています。死生観については、「心(マインド)」だけでなく、人それぞれ信じるか信じないかに関わらず「魂(スピリット)」の存在にどうしても触れざるをえなくなると思っています。この書籍でも平易な文章で踏み込んだ対談をされていたように思います。

 魂、あの世、祈り、臨死体験など、ともすれば怪しげな世界と勘ぐられそうな言葉についても、書籍の対談の中で話題になっていました。特に祈りに関しては、実は臨床試験という形で科学的なアプローチもなされていると、保坂先生はご紹介されていました(私はまだきちんと確認していませんが…)。


 また、保坂先生が末期がんの患者さんたちと出会ってきた中で、悔しそう、あるいは悲しそうにしている方たちがいた一方で、非常に穏やかに過ごしていらっしゃる方たちもいたという話題があり、個人的に興味を引きました。「生来の性格」と「スピリチュアリティ」という2つの軸で、生きる意味や死への恐怖が違ってくるとのこと。「生来の性格」は、(活動的・意欲的で)エネルギッシュな(執着気質の)人と(非活動的・意欲なく)消極的な(淡々とした)人のどちらかに別れているのがポイントと。そして「スピリチュアリティ」は、その人なりの死生観だったり、信仰だったり、死後の世界を信じていたりという、人智が及ばない事象や物事があることを受け入れられるような人生観をもっているか否か。スピリチュアリティのある方ほど、穏やかな気持ちで死と向き合っていらっしゃるとのこと。生き方もよい意味で変わってくるそうです

 その話題に関連して、くりにっくブログでも昨年ご紹介した「がんが自然に治る生き方」「サイモントン療法」の2冊の書籍を、「保坂先生のおすすめ」としてご紹介されていました。これらの書籍でも、魂・叡智・死生観といった目に見えない世界に大きな注目をした記載がなされています。



 実は、2016年にこの書籍が発刊された2年後の2018年1月9日に今淵恵子さんご逝去と、彼女のtwitterで事務所の方が報告されています。その投稿記事を以下に転載させていただきます。『今渕が亡くなる何日か前、しみじみつぶやいた言葉は「私は幸せ者だなぁ」というものでした。 本当にその通りだと思います。 幸せな時間を共に紡いでくださった皆様の幸せを今渕共々祈っております。』(twitterより引用)

 今淵さんが書かれたブログも閲覧可能でした。投稿数は少ないですが「私は幸せ者だなぁ」が私(院長)にも何となく伝わってくるような記事でした。人は誰しも、それぞれの人生でいろいろなことがあるでしょうけど、最期に「幸せ」と言えるって素敵ですよね。


 今淵さん、ありがとうございました。

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