• 和田仁

楽しんで生きたほうがいい


 2021年11月28日(つまり昨日)のFRIDAY DIGITALオンライン版に、『竹原慎二が明かす「がんステージ4と最悪の日々からのカムバック』と題した記事が掲載されていました。

https://friday.kodansha.co.jp/article/215173

 竹原慎二さんは、日本人で初めてミドル級の世界王座を獲得された元プロボクシング・世界チャンピオンで、記事にあるように数年前から膀胱がん治療中と報道されたのを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

 その竹原さんの病状や診断から治療の具体的な内容、そして完治(記事では根治)といえる5年を経過したご自身のいろいろな心境や葛藤を交えた手記のような内容となっています。医師の態度など今のがん医療に対し考えさせられる部分がいろいろありましたが、今回のブログはステージ4の文言を主なテーマとしました。


 ステージ4、がん専門医と自称される医師らの書籍にも「ステージ4は末期がん」といった誤った表現が使われています。そして、そういう書籍が新聞や書店の目立つところ、Amazonなどのネット通販でも、デカデカと広告されています。たしかに、終末期の病状は大半がステージ4です。でも、根治(がんが治った状態)が期待できるステージ4もたくさんあります。例えば耳鼻科のがん(頭頸部扁平上皮がん)は首のリンパ節(つまり所属リンパ節)に転移があるとほぼステージ4になってしまいますが、5年生存率が50%前後期待される病状もあります。前立腺がんや乳がんなど他のがんであってもステージ4で完治される方々はたくさんいらっしゃいます。

 逆に「末期がんでも治る」と本の表紙に堂々と宣伝しながら、内容をよく読むと(医療者側の判断で)いわゆる終末期の方は対象にされず、ステージ3もなぜか末期がんに扱うような記載のものもあったりします。専門家たちのきちんとした査読がある医学論文はこの辺の曖昧さはまずないのですが、一般向け書籍は医師(免許を所持した方々)が書かれた文章であっても眉唾な(悪い意味で)いい加減な記載がたくさんあったりするので注意が必要です。


 がん患者の気持ちもわからず勝手なことを書くな、とご批判を受けるかもしれませんが、あえて。気分を害された方がいらっしゃったら、ごめんなさい。

 もし5年生存率1%であっても(それは過去に治療を受けられた方々の統計上の数字であって)1%に入れば、その方からすれば100%の完治率となります。1%は0%ではない、治る方はいらっしゃる。生存率0%のステージ4と医師に(なんとなくの経験談として)宣告を受けたとしても、自分も必ず0%の確率に当てはまるかどうかは、未来にならないとわからない。安易な励ましをするわけではありませんが、ここはとても大事なポイントだと私はずっと思っています。

 『余命は「早くて半年、2年生存率0%」という腎臓がんの宣告を受けてしまったけれど、20年以上経過した現在も「命を唄うシンガーソングライターとして、命のマガジン『Messenger』編集長として、がんになる前より元気にトーク&ライブ、一般講演、学校講演、取材など全国を駆け回る(命はそんなにやわじゃないホームページより引用)』杉浦貴之さんのような方もいらっしゃいます。杉浦さんのご活動はとても素晴らしいと思います。ぜひホームページもご覧いただければ幸いです。

https://www.taka-messenger.com/


 竹原さんは記事の中で次のようにおっしゃっています。

「諦めなくて本当によかった。膀胱がんと医師に言われたとき、僕は『がん=死』だと思っていた。しかし、医療がすすんだ現在はそうじゃないんです。だから諦めないでほしい。それに、人は必ず死ぬ。だったら、楽しんで生きた方がいいじゃないですか」


 もし確率1%に入れなかったとしても、それは今ではなく将来に判明すること。治っても、そうでなくても、時間は全ての人に平等に過ぎていきます。治っても、そうでなくても、楽しんで過ごすか、そうでなく過ごすかは自分でしか決められないことであり、自分自身で選べることでもあります。自分がどのように思っても時が過ぎていくなら、竹原さんがおっしゃっるように「楽しんで生きたほうがいいじゃないですか」。


 古代ギリシャ時代の哲学者エピクテトスの名言に「人を不安にするのは、物事ではなく、物事についての意見・思惑」というのがあるそうです。がんという事象が不安なのではなく、がんについて自分が思い悩むことで不安を感じる、と言い換えることもできます。がんにかかって「生きるのがつらい」、がんにかかっていても「楽しんで生きる」、がんにかかったことに対する受け止め方は人それぞれです。 

 この名言、がん患者さんとそれを支える人々のための癒しのプログラムとしてアメリカの心理社会腫瘍学の権威であった故カール・サイモントン博士が開発された心理療法であるサイモントン療法、私も一度参加したことがある国内のサイモントン療法ワークショップで教えていただいたものです(私、高校時代に倫理社会も受験科目として選択しましたが、この名言を全く覚えていませんでした…)。ちなみにサイモントン博士は医師になりたての時は私と同じ放射線腫瘍医だったそうです。

 添付画像は、NPO法人サイモントン療法協会の現理事長(そして私の先生)である川畑のぶ子さんの著書「サイモントン療法ー治癒に導くがんのイメージ療法」の表紙を使わせていただきました。

https://www.kawabatanobuko.com/


 何より、楽しんで生きたほうが結果として病状が良くなっていくようだという患者さん自身の体験談書籍が数多くあります。辛く思い悩み続けて生きたほうが結果として病状が良くなっていくようだという患者さん自身の体験談書籍を私はまだ読んだことがないですし、たぶんほとんど存在しないのではないのかな?

 楽しんで生きる。がんにかかっていても、そうでなくても、とても大事なことだと私は思います。


 竹原さん、完治といえる5年が過ぎ、良かったですね。まだまだ、これから、楽しんで生きていきましょう!