がんコーディネートくりにっくでは、「全額自己負担の自由診療となります。今の所、保険診療は行っていません」と、ホームページ診療案内のところで最初にご説明させていただいています。
そこで今回のブログは、日本の保険診療などの現行ルールを話題にしたいと思います。
病院や診療所などで一般的に行われている日本の保険診療とは、健康保険に加入している方々が全員、どの医療機関でも(提供できる体制があれば)国が許可した全国共通の基準で設定された内容を同じ金額で受けることができる診療のことです。
保険診療は、厚生労働省が許可した診療「だけ」に対して、かかった費用の7〜9割ものお金を国の税金で代わりに払ってくれます。そして、とても高額な医療費がかかった場合には、各個人の収入に応じて支払額の上限も設定し(後で)還付してくれる高額療養費制度というものもあります。
日本の医療制度って世界に誇れるもの(日本医師会ホームページ)なのだそうです。一方、年々増え続ける巨額な医療費による財政圧迫問題もしばしば報道されますね...
厚生労働省が許可した診療「以外」のものを(文字通り)保険外診療といい、それに対して国は「原則として」利用者にお金を補助してくれません。また、保険診療と保険外診療を同時に行うことを混合診療といいますが、保険診療を行う施設で同じ日に混合診療を行うことも原則として認めていません。
参考までに混合診療についての説明は、厚生労働省のホームページにも当然ながら書いてあります。
先ほど「原則として」と「」で記したのは、例外があるからです。その一つが先進医療です。
先進医療とは、効果がけっこう期待できそうなんだけどまだ臨床試験などで証明しきれていない診療に対して、「国はお金を補助しないけど、提供する医療者たちがきちんとしたステップを踏んで臨床試験などの人体実験をするなら例外的に保険診療と一緒に行っても良いですよ」と、特別に認めてくれた高度な医療技術のことです。
放射線治療の分野だと、(私が南東北がん陽子線治療センターさんで6年以上診療させていただいている陽子線治療や、山形大学医学部東日本重粒子センターさんで研修登録医として経験させていただく)粒子線治療も先進医療として行われています。
なお、限局性の小児固形がん、前立腺がん、頭頸部非扁平上皮癌、骨軟部原発の悪性腫瘍は、すでに国内外から有効性の報告がいろいろ確認されていて、数年前から保険診療として認められました。そして現在も、日本放射線腫瘍学会の粒子線治療委員会や粒子線治療部会が中心となって粒子線全施設の先進医療登録データ解析を多数報告し、保険承認に向け行政の方々との検討を重ねておられます。
早ければ来春には他の多くのがん種・病態も保険診療可能に!と大いに期待を集めています。
例外的に混合診療が認められているものとして、先進医療など健康保険導入のための評価をする評価療養と、保険導入は前提としていないものの入院の個室料金とか救急外来の時間外診療など特別に認められた選定療養があります。
そしてそれ以外の、保険診療との混合診療を国が一切認めていない診療全てを「自由診療」といっています。セカンドオピニオンも自由診療の一つで、例えば腰が痛いから湿布も一緒に処方して欲しいといわれてもセカンドオピニオン外来診察の日に同じ施設で保険診療で処方箋を出すことはできません(湿布も全額自費なら処方できますが、薬局で直接買ったほうが早いかも)。
がんコーディネートくりにっくでは、健康保険を使った診療(保険診療)をしていませんので、国から7〜9割もの補助をいただく診療はできず、全額自費(自由診療)となります。ですから、受診する時に健康保険証を持ってくる必要はありません。なお、今の所は保険診療を行っていないのですが、将来的には導入を考慮しております。
以上を簡単にまとめると、以下のようになります。
① 保険診療:国民皆保険制度で国が多額の経済的補助する診療
② 保険外診療
1.保険外併用療養費:国は経済的補助しないけど保険診療と一緒でOK
評価療養(先進医療など)、選定療養
2.自由診療:国は一切経済的補助も保険診療との同時併用も許可しない
がんコーディネートくりにっくの診療もここ
PS:最後に先端医療も
先端医療なんてネーミングの学会やサイトもありますが、これは今の所、公的に正式な表記ではないようです。最先端な診療はもちろん保険診療で承認されているものにもあります。しかし、実際の所「先端医療」と記されている診療は、効果不透明なものが大多数です。中には新興宗教的な雰囲気なものもあります。医療広告ガイドラインに抵触するような記載のサイトもあります。
先進医療も臨床試験などの人体実験的な診療という立ち位置ではあるのですが、「先端医療」はそういった真っ当な実験ステップすら踏んでいないものが多いようです。真っ当なステップを踏んでいないから効果がない、とも言い切れないのが医療そのものの不確実性。
とはいえ、夢のがん治療!みたいなセンセーショナルな報道もたまに目にする基礎実験の結果などでも、いざヒトへの臨床試験に移るとほとんどが安全性もしくは治療効果の点で残念な結果に終わってしまうなどということは、医療者の間ではよく知られていることです。
確実性ある治療を行うタイミングを失うリスクは極力避けられるよう、ご利用される方の慎重な選択が求められます。
先進医療と先端医療、似て非なるものであることは記憶にとどめておいたほうが良いかと思います。
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