希望の和だチャンネル、第2回目のがんコーディネートくりにっくラジオ配信は(2024年9月5日PM10~)、私の心に深く刻まれた患者さんのお一人のお話をしました。
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今日のお話は、私が研修医として山形県の長井市立病院(今の公立置賜長井病院)で働き始めて、まだ1ヵ月くらいしか経っていないのに、人生で初めて主治医を担当させていただいた飯沢マサさんという忘れられない患者さんについてです。
マサさんは地元の有名な割烹の女将さんで、少しこわもてな印象がありましたが、実際はとても優しいご年配の方でした。当時、私はまだ25歳で、大学を卒業し国家試験に合格したばかり。初めての一人主治医としての経験は本当に緊張の連続でした。当時は近くにコンビニすらない地方病院で、どんな研修医でも一年目からすぐに主治医になれるというのが売りの一つでした。無謀にもそんな病院を選んだ私でした。
マサさんは不明熱で入院し、悪性リンパ腫が疑われ、東北大学からも週に一度、血液内科の先生が来てくださっていましたが、なかなか確定診断に至らず、難しい状況でした。当時、私が勤めていた田舎の病院では、診断も治療法もまだまだ不十分なものでした。
私自身が医学部時代にろくに勉強しなかったため、医学の知識は足りず、そして田舎の病院で最新の医学情報を集めることも集め方すらもよくわからず、しかも今考えても難しい病態でした。
そんな中でも、マサさんは私に文句ひとつ言わず、「先生に任せるから」と、信頼してくれていました。きっと心の中では不安や心配もあったと思いますが、それを私には見せませんでした。もし私が同じ立場だったら、不安で仕方なかったと思います。それでも、マサさんはいつも私を信じて、患者さんなのにむしろ私を支えてくれました。
その後の数か月間、マサさんは同じ内科病棟にほぼずっと入院していました。元気が良さそうな時は自宅外泊もしましたけど、最終的には私がお看取りすることになりました。正直、自分が主治医でなければ助けられたのではないかと、助かったかなあとかずっと考えました。でも、マサさんは最期の瞬間まで「ありがとう」と言ってくれました。最期まで信頼し続けてくれたこと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
おそらく今の医療技術でも、マサさんのような難治性の悪性リンパ腫は完治が難しいかもしれません。でも、彼女との出会いが、私にとって大きな学びと成長のきっかけになったことは間違いありません。
本当に申し訳なく、そして感謝の気持ちでいっぱいです。マサさん、あなたのおかげで私は医師として成長させていただきました。心からありがとう。
そんな恩人の診療経験なのに、実はまだ一度もくりにっくブログで紹介したことがございませんでした。大変申し訳ないのですが、これまでは放射線治療関連の患者さんの経験談ばかりを紹介してきました。他にも、私が内科研修医だったころ、つまり放射線治療を専門としていなかった時に担当した患者さんはたくさんいらっしゃいます。くりにっくブログの第2回目「はじめに」で、そのあたりの気持ちをぜんぶ込めて書いてました。
その一部を、改めてご紹介させてください。
『私は医師になってから、その時その時に自分なりに良かれと判断して診療をしてきました。これからもそのスタンスは変えません。
ただ、私がこれまでかかわらせていただいたなかで、残念ながら亡くなられてしまった方、病気が進んでしまった方、副作用やトラブルで苦しまれてしまった方もいらっしゃいました。私以外の医者であれば治せた、苦しみを和らげることができた方もいただろうと思います。
わたしが存じ上げている方もいれば、いまだに気づかずにいる大変申し訳ない方もいらっしゃることと思います。ご迷惑をおかけしてしまった医療関係者の方々もたくさんいらっしゃいます。そのような方々に対し、この場をお借りして改めておわび申し上げます。』(「はじめに」ブログより引用)
以上です。
では最後に、今日も私のエゴエゴアカペラカラオケタイムです。今日の曲は、私が医者になってから、飲み会のカラオケとかでさんざ歌った、いや歌わされた事のほうが多い、誰かにいつの間にか選曲されてなんどもなんども歌った、西城秀樹さんの「傷だらけのローラ」です。人生で3本指に入るくらいカラオケで歌った、だい好きな曲でもあります。
ある時、「じゃ、たくさん歌った他の2曲ってなに?」と聞かれたことがあったんですけど、どの曲が浮かんでこなかったんです。ということで、もしかしたらカラオケで一番歌った曲かもしれません。
では聞いてください。「傷だらけのローラ」、の替え歌、マサさんに捧げる歌「傷だらけのマサ」です。
あ、聞きたくない方はここで終わりです。本日もありがとうございました。
飯沢マサさん、ほんとうにありがとうございました。あなたのおかげで、医者になれました。もう、30年以上たちますが、あらためてどうぞ安らかに。
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