私が南東北がん陽子線治療センターに在籍時、「がんサロンほっと」というがん患者さんとの交流の場が、入院病棟があるフロアで定期開催されていました。自分が所属する病棟だったので気になり参加してみると、以前から私が想い描いていた「やってみたいな」という談話会もできそうな穏やかな雰囲気のサロン。
さっそく、主催者である医療相談室のチーフの方にお願いし、「がんが自然に治ったとされる人々がしていたこと」と題した私の談話会開催をご快諾いただきました!そして、年に数回、定期開催となりました。
2021年10月のくりにっくブログに、その当時の記憶や記録をまとめています。
『「がんが自然に治った」とされる人々がしていたこと:広報誌 南東北より引用』
数ヶ月に一度、平均して10名前後が参加される小さな談話会でしたが、ある時からほぼ毎回、参加してくださる方が。小島仁美さんという女性の方でした。しかも、わざわざ隣の宮城県から片道数時間かけて、新婚さんみたいなだんなさまの圭二さんが運転する自家用車で(仁美さんも運転してたかもしれませんが、きちんと確認してません)。
仁美さんがこの会に参加してくださるきっかけとなったのは、私のFacebookに突然届いた彼女からのメッセージでした。
がんサロンなどで経験した仁美さんたちとの情報交換は、私が今のスタイルで独立開業を決意する大きな後押しの一因となりました。仁美さん、そして圭二さんには、今も心から感謝しています。
生前の仁美さんは、「私のこと(経過や生き様など)も、サロンとかでぜひ発信してくださいね!」とおっしゃってました。
以下に転記した、仁美さんとのメッセンジャーなどの交流記録(なるべく原文のまま)の掲載については、だんなさんの圭二さんにも事前お問い合わせをさせていただいており、以下のメッセージとともにご快諾いただいています。
圭二さん
「凄く良い内容だと思います。 私が知らなかった先生とのやりとりも知れて嬉しいです! この文章が誰かの生きる力になり、誰かの支える力になるといーなーって思いますので、今不安でいる人に届けてあげてください! よろしくお願いします。」
仁美さんが生きていた記録、ぜひ目を通していただければ、うれしいです。
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2016年10月 仁美さんからの最初のメッセージ
仁美さん
「急なメッセージ、申し訳ありません。私は、先日、肝細胞癌を患い手術をしました。ステージ3でした。再発の可能性もあるのかもしれませんが、でもまだまだ生き続けたいので、病気に対する知識を深めたく、自分なりに情報を集め、学び始めたところです。少しでも学びを広げ、視野を広げ、その中から自分なりの選択をしていくためにも、和田先生からも学ばせていただきたいと思いメッセージさせて頂きました。もしよろしければ、友達申請よろしくお願い致します。」
仁
「仁美さん、はじめまして。メッセージをありがとうございます。ご自宅は薪ストーブでしょうか?我が家にも、薪ストーブがあります。お友達レベルだとかなりお遊び投稿が多く、仁美さんのご期待に沿えるかわかりませんが、そんな感じでもよろしければ。」
仁美さん
「和田先生、ご返信ありがとうございます。実は、メッセージを送った後に、失礼なことをしてしまった…、と反省をしていました。メッセージを頂き、安堵感と嬉しい気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。病気とはこれからも共存して生きて行くしかないので、自分の身体と向き合って、少しでも身体に良いこと取り入れていきたいなぁと思ってます。ペレットストーブをいれて、ここ最近寒くなってきたので、火を焚いてます。 これから、どうぞよろしくお願いします。」
仁美さんが私のFacebookフォロワーに
2017年7月5日 再発で陽子線治療のセカンドオピニオン診療希望あり
仁美さん
「こんなことを和田先生に、メッセンジャーで相談するのは本当に反則だとは思うのですが。 セカンドオピニオン外来で相談するべきだとは思ってますが、今日南東北がん陽子線治療センターに相談する前に、和田先生に相談したくて連絡してしまいました。 本当に失礼なことをしていること、申し訳ございません。」
仁
「限局した病巣なら陽子線対象になりそうです。セカンドオピニオン外来、そんなにお待たせしないはずです。私でよろしければ電話で受付に和田希望とお申し付けください。」
仁美さん
「セカンドオピニオン外来、それほど待たないのであれば、選択肢として考えたいです。 生命保険は、先進医療特約が付いていたと思いますが、自宅にあるので家族に確認してもらいます。 今日の午後に、また主治医と家族含めて話をして頂く予定なので、主治医にもなお相談したいと思います。 和田先生、お会いしてご挨拶もしていないのに、込み入った相談をしてしまい本当に失礼なことをして申し訳ございません。 それなのに、相談に乗っていただき、本当に感謝しています。 ありがとうございます。
私、まだやりたいことがあるので、そのためにもう少し生きたいんです。 しかも、出来る限り体も動けて、健康的な私で(笑)。 贅沢な願いかしら…。だから、まだ迎えに来ないでね、って、言ってます。死が怖いのは、まだやり残したことがあるからだと私なりに思っています。だから悲しいという気持ちよりも、悔しい気持ちがあって。 やりたいことのために、今回も乗り越えるつもりです。私の力と、周りの皆の応援を力に変えて、乗り越えます。
私が、私のことを信じてあげたい、と思います。和田先生、ありがとうございます。」
仁
「週月曜、確認いたしました。再診の気分で来院ください。」
仁美さん
「こちらこそ、よろしくお願いします。 再診の気分で(笑)ありがとうございます。私と夫と、私の両親合わせて、総勢4人でお伺いします。」
仁
「4名ですと、こちらが緊張しそうです。」
仁美さん
「笑。 それでは、ほぐすために自己紹介からでも始めてみましょうか(笑)。 好きな食べ物、とか?! なんだかリラックスして病院にお伺いできそうです。 ありがとうございます。 それでは、当日よろしくお願いします。」
2017年7月10日 南東北がん陽子線治療センターで初診。治療方針としては主治医の所で予定通り。たまたまだったのですが、主治医が私の大学サッカー部の後輩外科医でした。
仁美さん
「和田先生、今日はありがとうございました。私がどうしたいのか、を視点にした上で、先生から治療法を説明して頂いたので、とても分かりやすく、整理しやすかったです。私が良いなと思う治療法を、迷うことなく決めることができました。和田先生のセカンドオピニオンを受けて、背中を押してもらった感じと、気持ちのモヤモヤが消えて、帰り道はすごく前向きな気持ちで自宅に戻ってきました。 本当にありがとうございました。」
仁美さん
「K先生の先輩とも聞き、私が和田先生に出会えたのも、何か縁を感じたところでした笑。それから、和田先生、今日お会いして私の中で確信したことは、好きな先生だな、ということです。 直感が合っていました。K先生(私の大学サッカー部後輩)も、S先生(私の同級生!大学サッカー部キャプテン!笑)も、同じ直感のあった先生です。」
仁
「Good luck !」
その後、わたしが南東北病院で定期的に開催する、がんサロンの談話会にほぼ毎回、わざわざ宮城県から夫妻でご参加。トップファンでした!
仁美さん
「癌細胞だって、元々は私の細胞ですもんね。意識とかイメージが、体をそっちに引っ張って行ってくれるから、優しく語りかけますね。そんなことを伝えてくれる先生がいるって嬉しいな~って思います。
そのためのサロンですかね。私もそうだけど、力になってる人いますよ~。
やっぱり和田先生は、素敵な先生です。医学は必要。でも健康になっていくにはそれだけじゃ足りないです。そう感じます。だから、また会いに行きます。」
2018年5月14日 抗がん剤などの相談のため、再度セカンドオピニオン診療で来院
仁美さん
「先生の話をお聞きして、今回分子標的薬での治療を行う目的が私の中ではっきりしました。その先の見通しや選択肢を持てたのも、私の気持ちの中では大きかったです。モヤモヤしていた気持ちもすっきりして、『よし、頑張ろう』という気持ちで治療に望めそうです。 今週からの始まる治療が、納得できて進められること、モチベーション高い状態でスタートできること、今日があったからだと思っています。
和田先生に会いに行ってよかった。ありがとうございました。またサロンでお会いできること、楽しみにしています。」
2018年6月8日 宮城県大崎市で開催した南東北陽子線講演会(私が講演者)
仁美さんのお母さんが「行ってくるね~」と、仁美さん本人の病状が不安定なため、代わりにいらしてくださったようです。
仁美さん
「あれから私の体の中のひねくれ細胞と、話をしています。おとなしくね~、もう居なくなって大丈夫だからね~、みんなと調和できる細胞に生まれ変わっておいでね~、って会話しています。なんだか気持ちが落ち着くんです。
母との電話で、陽子線治療の話はもちろん、最後の『気持ちの持ちよう』についての話がとても良かったと言っていました。いい先生に出会えて良かったね、と言われました。」
2018年8月24日 がんサロン開催
仁
「いつもご参加ありがとうございます。毎回ほとんど同じ内容で申し訳ありません。」
仁美さん
「和田先生、ありがとうございます。いいんです、お話もだけど、和田先生に会いたいから参加させてもらってるので~。今日もまた、元気もらって帰ってきました。ありがとうございます。 和田先生のおっかけより(笑)。
今は、癌と上手く付き合いながらいけばいっ~か~、という感じで生きてます。勝ち負け、という考えじゃなくなったら、気持ち楽になった、と言うか。きっとそのうち、癌が『なんかここに居るのも、もういいかなぁ』と思って、居なくなっていく、みたいな。そんな感じでイメージしてます。
和田先生に出会えたのも、心の持ちようってのを考える大きなきっかけになってます。だから、ありがとうございます」
2018年9月3日 温熱療法について相談
仁美さん
「直感、で言うならば、『やらない』の選択なんですが、気持ちのどこかで、何かにすがろうとしてる自分がいます。でも、悪いものでなければ、いろいろ試して判断するのも良いのかなぁとも思ったり。お忙しいのに、いつもいつも対応してくださり、本当にありがとうございます。」
仁
「やってみるのはありです。」
仁美さん
「でも、先生、 そこのクリニックの先生にあった瞬間、 あー、やめようかなぁ、と思う私の直感でした(苦笑)。サンピア~の湯~にでも行こうかな。玉川温泉と同じ効能の岩盤浴が、あるんですって。和田先生と連絡させてもらうと、気持ちが楽になります。和田先生の存在が、私にとっては治療効果を高めてくれる、と思ってます。 私の大きな補完療法のひとつですね。 ありがとうございます。秋なので、まずは近場の南陽温泉(山形県)、いいですね。」
仁
「南陽温泉の近くにある有名な『龍上海』の辛味噌ラーメンはお薦めです。糖質制限されてたらダメかもしれませんが…赤湯本店か山形大医学部前店以外は外れです。医学部前店は私も良く食べました。」
仁美さん
「お風呂がたくさんありますね~。 美味しいラーメン屋さんまで。先生、おもしろい。糖質制限は、とってもゆるゆるでやってるので、大丈夫です。(『龍上海』が全国ラーメン店ランキングで)全国一位ならば、行ってみたい。秋の楽しみが増えました。」
2018年12月18日
仁美さん
「和田先生、おはようございます。今週のがんサロンですが、都合がつかず参加できないんです。和田先生に会えず残念です。今年もサポートしていただき、ありがとうございました。転移した肺の腫瘍は、少し大きくなってるんですが、体の様子は良くて、好きに過ごしてます。
私が癌になりたての頃、がんサロンで先輩方に支えてもらって、元気な姿が私の希望にもなってて。それで、こんどは私も支える側になりたい、と思っていて。そんな思いを私のサポーターの人達に伝えたら、そうゆう活動に繋いでもらったりしはじめてます。なんだか、とてもワクワクしてます。私だから力になれることってあると思ってます。
和田先生、また来年になったら、サロンにおじゃまします。 お会いできるのが、楽しみです。今年もあと少しですが、お体に気をつけて、良い年をお迎えください。和田先生は、私にとって大切なサポーターです。 また来年もサロンや、セカンドオピニオンで、力をかしてください。」
2019年3月12日 仁美さんの最後のFacebook投稿より
「10日ぶりくらいに、外の空気を吸いました。
今回も生きさせてもらったことに感謝。
ありがとう。
これまで、何度もピンチを乗り越えてきた。
命を与えてもらってきた。
だからこそ、どんなことがあっても、この命を輝かせて生きていきたい。
そんな風に思う今日です。」
2022年3月
仁美さんのだんなさんである圭二さん
「あの日から3年が経ちます。4月2日、3回目の命日に納骨をすることにしました」
2022年5月
仁美さんの墓地がある町を訪れたこともあり、ご挨拶に行ってきました。
仁美さん、やすらかに。
仁美さんのFacebook
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