登場する8名(ほぼ)全員がステージIVであるがん患者さんたちの記録集というのは、書籍としては国内初ではないでしょうか?
ちなみに(ほぼ)と書いたのは、事実上のステージIVである全身血液がんの成人T細胞白血病の方がいらっしゃったり、遠隔転移ではない頸部リンパ節転移もステージIVとなる中咽頭がんの方がいらっしゃったり、初回治療時はステージIVでなく経過観察中に再発ステージIVとなってしまった方がいらっしゃったりと、幅広いステージIV相当だったからです。
とはいえ、編著者の杉浦さんの記録を含めて、どの方も一時は難治性がんの状態だったことに変わりありません。がんサバイバーが記された書籍にもいろいろあり、早期がんの方がいたり、(この書籍で登場される方々の自己申告も含めてですが)診断は正しかったのか?という方がいたりします。そういった書籍をどうこういうつもりはありません。
しかし、この書籍に登場されたみなさんは、全員が難治性がんの状態からおよそ『10年たっても元気な』(引用)方々の体験談。これは貴重な記録集だと思います。
書籍の「はじめに」では、編著者である杉浦さんの変わらぬスタンスが示されています。そうだよねーと私も同意する文章ばかりです。ということで、少しだけ引用ご紹介させていただきます。
『誤解してほしくないのは、現代医療を否定しているわけではないということです。…(中略)…ネットの情報を見ると心がざわつきますよね。現代医療否定派が陰謀論や極論を持ち出して、ネット上で否定を繰り返す。また逆に「科学的根拠がない」「エビデンスがない」という理由で代替療法を一笑に付し、否定する。…(中略)…そんな情報を目にして、現在治療中の方がどれだけ不安になるでしょうか。…(中略)…目指すところは同じはずなので、もっと寛容に、互いを認め、受け入れながら、手を結んでいける時代になれば良いと思います。』
この書籍では、さまざまな治癒プロセスを経験された方々の物語が紹介されています。現代医療を受けた方々や代替医療も活用されて回復された方々など、それぞれの方々が選んだ治療法や生活習慣改善の方法などが詳しく記されています。
残念ながら「誰にも効く特効薬や治療法」は書かれていません。しかし、彼ら8名(と杉浦さん)が選んだ方法や心の変化などは、これから治療を始める方や再発を予防したい方々にとって価値ある参考になる情報がたくさん散りばめられているのではないでしょうか。
また、彼らの「心」「生き方」の変容には、共通項として以下①〜⑦の「がんを治すマインドセット7か条」があると、杉浦さんは書籍に記されています。
①自分の存在価値を認める
②人間の無限の可能性を認める
③喜びの中に生きる
④がんという出来事にプラスの意味付けをする
⑤自分の人生観に照らし、治療法を自分で決める
⑥周りに感謝し、自分に感謝して、「生かされていること」に感謝する
⑦治療効果が高まるイメージをし、治療後の自分の姿をイメージする
これらをすべて満たさなければ、がんは治らない、とは思いません。しかし、杉浦さんが強調されている「希望」につながる、これからの人生の羅針盤にはきっとなります。
最後に…余命告知、いまだに生存率0%と断言される医者は少なくないんでしょうね。こういう書籍を拝読すると、絶対に「生存率0%」などという宣告はできないと個人的にはつくづく思うのですが。
ぜひ、がん診療に携わるお医者さんにも読んでいただきたい書籍です。
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