• 和田仁

日本緩和医療学会第33回教育セミナー:くりにっく診療に関連し気になった点など


 本日、オンラインで日本緩和医療学会第33回教育セミナーに参加しました。全部で以下の7講演と多岐にわたる内容でした。

①進行がん患者の体温上昇や感染への対応:小田切拓也氏(小牧市民病院 緩和ケア科)

②事例から学ぶオピオイド鎮痛薬の選択:石木寛人氏(国立がん研究センター中央病院 緩和医療科)

③患者側から考えるがんサバイバーシップ:岸田徹氏(NPO法人がんノート)

④緩和医療における多職種で取り組みせん妄対策:井上真一郎氏(岡山大学病院 精神科神経科)  

⑤家族の悲嘆ケア:広瀬寛子氏(戸田中央総合病院 カウンセリング室)

⑥緩和的放射線治療を上手に活用するために:中村直樹氏(聖マリアンナ医科大学 放射線治療科)

⑦緩和ケアにおけるリハビリテーションのきほんのき:立松典篤氏(名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専予防・リハビリテーション科学講座)


 ⑥の緩和的放射線治療に関する演者の先生は、放射線治療の研究や広報・普及啓蒙を実践する日本放射線腫瘍学研究グループ(JROSG)の緩和医療委員会で若き委員長である中村教授でした。開業医となり臨床研究の症例登録などに協力が難しくなってしまった私ですが、中村先生を始め委員会の先生方にいろいろご高配をいただき、引き続き委員会のメンバーとして末席に連なることとなりました。緩和的放射線治療の国内研究の最先端情報をリアルに学ぶことができ、とてもありがたいことです。この場をお借りして、深く御礼申し上げます。

 さすが中村先生のご講演、国内外の最新エビデンスを多数交えた内容でした。疼痛緩和や止血は緩和的放射線治療の得意分野であることや、中村先生たちの最近の研究結果などから普及しつつある骨転移キャンサーボードが骨転移診療の質を向上させる可能性があること、また逆に緩和的放射線治療は早期または強力に行うことが必ずしも有効とは限らないことなど、いろいろ示唆に富むメッセージがご提供されました。



 今回のセミナーで私が興味を引いたのは、医師でない演者の方々のご講演でした。セミナーの規定で、詳しい講演内容をこのブログに書くことはなかなか難しいのですが、くりにっく診療をする上でいくつか気になった点を考察してみたいと思います。


 ③は、岸田さんご自身のがんサバイバー経験を始め、のべ300名以上のサバイバーの方々へのインタビュー記録から、がん治療だけでなく家族や生活など多くの課題をかかえ、それらを理解した上でサポートすることが大切とのご発表でした。笑うから幸せ、というメッセージのスライド、やっぱり笑いなのかーという感じでした笑。

 岸田さんは、病院の先生だけでなくいつでも相談できるホームドクターの存在も大事だけれど、開業の先生方で様々ながんの情報を収集する施設を探すのは大変といったことも仰っていました。様々ながん診療にかかわる開業医さんというのはそうないかもしれません。放射線治療科や腫瘍内科でご開業されている先生方ももちろんいらっしゃいますが、自施設での治療が主体な所がほとんどかと思います。演者の岸田さんが課題とされたがん診療のホームドクター的な立ち位置を、うちのくりにっくでは目指しています。


 ⑤の悲嘆ケア、正確にはグリーフケアとなるでしょうか(悲嘆とグリーフは同義語ではないようです)。広瀬先生も多数のがんでご家族を亡くされた方々への20年を超えるサポート経験から、ご家族の心情を理解したさまざまなサポートやケアへのアドバイスをいろいろご教示いただきました。寄り添いや誠実に接することがとても大事で、医療者側の(なにげない)言動が残されたご家族を長期間傷つけていることがあることも改めてご指摘いただきました。

 ただ、ご家族を喪失した心の奥底にある悲しく辛い想いを癒すスピリチュアルケアは、寄り添いや誠実さでは根本的な解決につながらず、なかなか簡単なことではないと思います。ご家族が紆余曲折しながらも何らかの形で「ご自身で」解決する必要がありそうです。(後日また改めてブログのテーマにさせていただきますが)その解決の一助として、当くりにっくではご自身の潜在意識に働きかける催眠療法による「グリーフセラピー(悲嘆療法)」にとても注目しています。すべての方々に有効なわけではないのですが、個人セッションにより潜在意識下で亡き人(や動物)との対話が可能となる方々が少なからずいる。そして、生前に伝えきれなかったことや悔やんでいたことなどが癒やされる方々が少なからずいる。グリーフケアにもっと催眠療法を取り入れたほうが良いのではないか?くりにっくとしての経験はまだまだ乏しいですが、大事な選択肢であると今のところ考えています。


 ⑦のがんリハビリテーションもこれからさらに重要さを増していくと予想しています。手術回復期だけでなく、緩和ケアや治療関連有害事象(リンパ浮腫など)やフレイルなど多岐にわたる時期にリハビリテーションは必要となります。ただ、今の診療報酬上での大きな問題点はリハビリテーションが入院患者さんにだけ認められている(保険診療として医療施設がお金をいただける)こと。外来通院の方々に対するがんリハビリテーションは事実上認められていません。⑤の悲嘆(グリーフ)ケアも保険診療で認められてないため、自費診療(または病院のボランティア)となります。

 がんリハも保険診療上の制約があるが大事な領域、とくりにっくとして考えています。まずは、リンパ浮腫の方々に対する外来リハビリテーションを今年中にご提供開始予定です。いずれは現行の保険診療の狭間となっている様々な時期のリハビリテーションにもなんらかのサポートがしたいと思っています。



 現在のくりにっくの立ち位置を確認できた、とても勉強になる教育セミナーでした。