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日本のがん医療に必要なのは「スーパードクター」ではなく「がんの総合診療医」

 先日、あるSNSの投稿で2018年6月22日の朝日新聞GLOBEさんの記事『逸見政孝さんを執刀した「ゴッドハンド」が最後に頼った医者』をたまたま目にしたら、とても共感を覚える記載がありました。東京女子医大の林和彦先生が、現在そして今後のがん治療医のあり方について、示唆に富むコメントをいろいろ残されています。


 僭越ながら私の見解も「斜体字で」少し付記して、***以下にその一部の内容(を損ねないよう配慮し若干改変)をご紹介したいと思います。

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 現代医療における「理想のがん治療医」の条件とは何か。東京女子医大の林和彦がんセンター長(当時55)が、故・逸見政孝さんの手術も担当した恩師の羽生富士夫さんとの思い出を交えつつ、語ります。(聞き手・太田啓之)


 10年前ならば、手術の技量や治療内容の病院間の差は、結構ありました。でもここ数年で、がん診療連携拠点病院や専門医による治療は、どこに行ってもほぼ同じになりました。それぞれのがんごとに、関連学会が科学的根拠に基づく治療方針を取り決めた「ガイドライン」をつくり、どの病院でもそれに沿って治療することが求められているからです。

 手術の術式も似たり寄ったりで、病院間の死亡率の差も平準化した。少なくともがん治療については、かつての羽生先生のように、飛び抜けた技量を持った医師はほとんどいない、と考えて良いでしょう。


→ 特に「ガイドライン」に沿って治療することができない症例については似たり寄ったりではなく、病院間だけでなく同じ診療家内の医師の間ですら、それぞれの考え方に今でもかなりの差があります。少なくともがん治療については、良くも悪くも?飛び抜けた見解(治療適応の判断や治療方針の選択)を持った医師はそれなりにいる、と考えて良いでしょう。

 飛び抜けた場合は患者さんにとってハイリスクではありますが、ガイドライン診療にはないリターンが得られる可能性も(経験豊かな専門医の場合は)あります。良く言えば医師の腕の見せ所とも言えますが、いろいろな制限があるこのご時世ではそのような診療はなかなか難しいところがあります。もっとも、飛び抜けた医師はそのようなことをあまり気にされない事が多いように思いますけれど。

 現代の日本のがん医療に必要なのは、「スーパードクター」ではなく、がん治療のさまざまな分野について十分な知識や経験を持ち、病状の回復や進行に合わせて治療の選択肢を示し、患者のガイド役となることができる「がんの総合診療医」ではないでしょうか。


 「医者の専門性を高め、役割分担を進める」と言えば聞こえはいいですが、患者にとっては手術、化学療法、放射線治療と、治療法が変わるたびに主治医が変わることを意味します。それでは患者と医師の信頼関係を築くのは難しい。

 現実には患者の年齢や希望によって、治療の選択肢は変わります。40歳代なのか、70歳代なのか。「100歳まで生きたい」と思っているのか、「もう十分生きたので、身体的に負担の大きな治療は避けたい」と思っているのか。医学情報に加え、患者の情報や一般常識まで踏まえ、病状の変化に応じて患者に選択肢を示し、アドバイスをするのがプロとしての医者の務めでしょう。


(中略)


 がん治療の様々な面に通じているからこそ、患者と長期にわたり付き合い、信頼関係を築き、治療の最後までガイド役を果たすことができる。そんな「人間的にも優れたブラック・ジャック」こそが、私にとってはがん治療医としての理想像です。

→ 太字はこの記事で私が最も共感する部分です。くりにっくホームページにも記載していますが、利用者さんの価値観や希望・状況を尊重し、こうありたいと感じられる人生の選択にともに向き合い、安心や納得をともに感じられるがん療養をご相談ご提案したいと思っています。

 また、患者さんが検討されているまたはすでに実施されているいろいろな保険外診療や、その方の心や魂といった目に見えない領域を含めた生き方などを、いずれも横一線の目線で大事な選択肢として尊重する医療者側の立ち位置や寄り添いも、「がんの総合診療医」に求められる重要な素養だと私は思っています。

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 逸見政孝さん、もしかすると今の若い世代の方々はご存じないでしょうか…?彼に施行された2度の胃癌手術、いずれも無理な切除をしてしまったのではないかと今も勝手に思っている、消化器外科医ではない私です。


 名の知られた施設だからといって、自分に適した診療がなされるか、自分の病状に適した医師に巡り会えるかどうかわからない。もちろん、どんな医療行為にも絶対はないのですが…。今の病状に適した診療は?施設や医師は?そんな出会い、めぐりあいにお役に立てるような「がんの総合診療医」になろうと、今年の春からくりにっくを立ち上げました。

 改めて、どうぞよろしくお願い申し上げます。




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