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催眠療法(ヒプノセラピー)について

顕在意識と潜在意識、催眠療法(ヒプノセラピー)とは


 人の意識というのは、海面に浮かんだ大きな氷山の右図イメージのように、

自覚できる顕在意識(ペンギンがくつろぐ氷上)は全体のわずか数%で、

潜在意識が残りの90%以上を占めていることが心理学で周知されています。

 顕在意識は「表面意識」とも呼ばれ、思考・理性・知性など

普段認識できる意識を指します。一方で、潜在意識は「無意識」とも呼ばれ、

感情・感覚・直感・記憶・欲求など普段は認識できない意識を指します。

 催眠療法のことを英語でHypnotherapyまたはHypnosisと呼びます。

セラピストの語りかけにより、患者さんが自分の潜在意識に自らアプローチし、

ストレスや病気などが生じた根本原因を探ろうというものです。

欧米では1950年代から医師会によって認められてきた心理療法です。

 よく誤解されるのが、テレビショーなどで見かける催眠術(英語ではHypnotism)です。催眠術は、施術者が他人の心をあやつる(コントロールする)ような暗示をかけるコミュニケーション技法とされます。一方、催眠療法は科学的にも有効性が示されている心理療法のひとつで、精神心理療法として保険診療も可能です(ただし、費用対効果の面:赤字で、現実には保険診療が実施困難な状況)。

 催眠療法は、被検者が自ら催眠状態に入った状態で被験者本人の内面(潜在意識)と向き合いながら、悩みやストレスの原因を探ったり、解決の糸口を見つけたりします。催眠療法のセラピスト(催眠療法士など)は暗示的な言葉を使って被検者の体と心をリラックスさせ、潜在意識とのつながりを深めるサポートをするにすぎず、あくまで被検者自身による自己催眠です。

 また、睡眠と催眠は異なります。睡眠は寝ている状態で、脳波によってシータ波優位のレム睡眠と、デルタ波優位のノンレム睡眠とに分けられています。一方、催眠とは、寝る前や目覚め時のようなボーッとした意識の状態(変性意識状態)になることで、顕在意識はしっかりあります(つまり起きています)。脳波でいうと、アルファ波が優位な状態です(ただし、深い催眠ではシータ波も)。普段の生活で覚醒している時でも、スポーツや映画鑑賞などに夢中になっている時や、高速道路などの運転で寝てもいないのに途中の走行時の記憶が定かでない時なども催眠状態で、私たちがきちんと気づかないだけで誰しも毎日何度も味わっている普通のことだそうです。

催眠療法の歴史、​体感できること

 催眠療法は、古代エジプトの時代から存在する歴史ある治療法です。19世紀には、スコットランドの外科医ジェームズ・ブレイドが、手術中の痛みを軽減するために催眠を導入し、成功を収めたことがきっかけとなり、現代的な催眠療法が発展しました。

 催眠療法の最も大きな特徴は、深いリラックス状態によって、クライアントが潜在意識にアクセスすることができることです。この状態では、日常の意識では気づかなかった思考や感情、記憶などにアクセスでき、自己の内面をより深く探求することができます。

 また、催眠状態に入ることで、身体的な緊張が緩和され、ストレスや不安感が軽減されることがあります。さらに、クライアント自身が肯定的なイメージをイメージングすることにより、自己イメージを向上させることができます。これによって、自信や前向きな心構えが養われ、問題解決に向けた行動が促進されることがあります。

催眠療法は、薬物療法に頼らず、クライアントの内面にアプローチするため、副作用や依存症のリスクが少ない治療法として注目されています。診療所では、経験豊富な療法士がカウンセリングを行い、個々のクライアントに合わせたプランを立て、安全かつ効果的な催眠療法を提供しています。

がん診療における心(メンタル)ケアと精神(スピリチュアル)ケア

 私は病院の臨床現場で実感し続けてきましたが、西洋医学はがんに対して万能ではなく、がんを切除したり、抗がん剤や放射線でがんを縮小させるという対症療法です。しかし、身体と心は切り離すことができないため、魂・精神・身体が影響し合っている領域に踏み込まざるを得ません。そのため、心や魂といった見えない世界を想定した医療が必要であり、スピリチュアルな医療が求められていると考えます。病は気から、がん診療全般でもしかりだと私は思っています。

 スピリチュアル、特に日本では「スピ(リチュアル)系」というオカルトや宗教関連で目先の幸せや癒やしを得る手段や思想といったネガティブイメージな言葉で捉えられがちです。しかし、世界各国が参加している有名な世界保健機関(WHO)でもスピリチュアルという概念は以下のように真剣に検討されています。『1998年の世界保健機関(WHO)の常任理事会は健康定義を改訂してスピリチュアルな健康を加えることを決定した。残念ながら、翌年の総会にはこの議案は提案されなかった。総会にこの議案が載せられなかった理由は、参加国のいろいろな国内事情があったからと聞く。現在、世界の医療界、健康科学界ではスピリチュアルな健康の重要性を認めていて、医療者とチャプレン(病院牧師)との協働作業がなされている。その背景には病気に苦しむ人たちがより安心して生活できるようにとの願いが働いている。スピリチュアルな健康とは何かについては未だ議論は決着していない。しかし、WHOの専門委員会の報告書804号には、次のように書かれている。「患者は、霊的な面での体験を尊重され、これについての話に耳を傾けて聞いてもらえると期待する権利をもっている」』(窪寺 俊之 心と社会 No.163 スピリチュアルな視点より引用)

 

 私ががん緩和ケアの専門家が集まる学会などに参加してもしばしば感じることなのですが、現在の医療界でも、身体と精神のつながりは扱われていますが、魂に関してはあまり取り上げられていません。特に終末期においては、スピリチュアルペインに対するスピリチュアルケアが必要です。しかし、医療従事者が目に見えない世界に足を踏み入れることは未だにタブー視されています。

 WHOが検討しているスピリチュアルな健康、日本のがん診療では心(メンタル)の部分は心理士さんや看護師さんなど医療現場の職種が主に関わります。しかし、魂(スピリット)に関してはこれまでは宗教関係者が関わることが多いです。最近では宗教の枠を超えた臨床宗教家といった立場の方々も活躍し始めていますが、スピリチュアルペインや死生観というものは宗教だけの話ではなく無宗教の方々や宗教になんらかの抵抗感・違和感を持つ方々にとっても大変重要な問題です

催眠療法、どんな感じで行うの?

 

では実際に、催眠療法の概要を以下に記します。

 

1.事前問診

    最初に、セラピストがクライアントと直接会い、カウンセリングを行います。クライアントの背景や  

    問題の詳細、催眠療法への期待などを聞き取り、クライアントの目標に合わせたプランを立てます。

2.催眠導入

    次に、セラピストは言葉や音楽などを使って催眠状態に誘導します。クライアントがリラックスし、

    安全な空間であると感じられるよう、セラピストはポジティブなイメージや肯定的な言葉を使用する      

    ことがあります。

3.催眠(暗示療法、幼児退行療法、前世療法、悲嘆療法、体細胞療法、など)

    催眠状態にあるクライアントは、自分の潜在意識にアクセスし問題の根本原因を探ることができます。 

    また、クライアントは、意識の状態よりも強力な想像力を持っているため、肯定的なイメージを使って

    問題を変容させることができます。セラピストは、イメージを提示したり、特定の質問をしたりして、

    問題の原因についての気付きを得る手助けをします。セラピストは、クライアントに肯定的なイメージ

    を提示し、そのイメージを強く感じさせるように促します。こうして、クライアントは自己イメージを

    向上させ、問題を解決するための自信を得ることができます。

4.解催眠と事後面談

    催眠状態から徐々に覚醒した後、クライアントとセラピストはセッションの結果を評価し、今後の方針

    について話し合います。また、クライアントが抱える問題に対する洞察を深め、新しい視点を得ること

    ができるよう、自己洞察力を高めるための提案をします。

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